はじめに 〜空が語り始めるとき〜
陽が沈みかけた空は、静けさとともに、どこか語りかけてくるようです。
鮮やかな色を失いかけながら、かすかな熱を残して染まる空の下、ひと枝の実ものがそっと佇んでいます。
言葉はありません。ただ、そこにあるだけ。
けれど、その存在からにじみ出るような静けさと確かさが、心の深いところにふれてくるのです。
枝は伸び、命を結ぶ
自然の中で生まれたものたちは、計算されたような整いではなく、自由に、気ままに、でも確かなかたちでそこにあります。
この枝もまた、切り株の上からのびやかに曲線を描き、光の方向に導かれるように葉を広げています。
そして、いくつもの黄みがかった果実が、まるで「季節を抱えている」かのように揺れています。
それはただ美しいだけでなく、命が過ごしてきた時間の証のように、重みをもってそこに実っているのです。
空の色に、心がほどける
背景に広がる空のグラデーションには、どこか「終わりの優しさ」があります。
沈みゆく陽が最後の色を残し、空全体をやわらかく包み込むその光景は、感情を静かに鎮めるような力を持っています。
そんな空に溶け込むように、実ものの姿もまた控えめに佇んでいます。
自己主張せず、ただ風景の一部となって、命の存在をそっと教えてくれるのです。
見送る時間、見届ける実り
何かを語ろうとしなくても、そこにあるだけで心が動くものがあります。
この作品もまた、そんな静かな佇まいの中に、“命が生きたあとの余韻”のようなものを感じさせてくれます。
和花写流では、光の方向と色調の調和を大切にしながら、それぞれの要素がひとつの風景として呼吸するように構成されています。
この一枚もまた、自然と心がそっと重なる瞬間を切り取った、語らずして語る静けさの表現です。
