はじめに 〜静けさに心をゆだねて〜
日常の喧騒からふと離れ、静かな景色に身を委ねたくなるときがあります。そんなときにそっと心に寄り添ってくれるのが、風景の中にひっそりと咲く一輪の花。
今日は、青のグラデーションが美しい山々と、凛と咲く白木蓮が織りなす静かな世界をご紹介します。
写真の中に流れる空気に、そっと耳を澄ませてみてください。
静けさをまとった山の声
霞のように重なる青の山並みは、まるで水墨画の一場面。自然の手で描かれたそのグラデーションは、見る者を穏やかに包み込み、静寂の奥へと誘います。
色彩の少なさが、むしろ深い余韻を残し、視線はゆっくりと山の奥へと吸い込まれていきます。
ここには時間さえも緩やかに流れ、まるで記憶の中の風景を見ているような感覚に陥ります。山々が語る声なき言葉に、心がそっと応えていくような——そんな場所です。
水面に咲く、白きひとひらの気品
静けさの中心にそっと佇むのが、白木蓮の花。控えめでありながら、その白さはまるで祈りのように澄んでいて、写真の中に凛とした緊張感と優しさを添えています。
流木という自然の器に生けられた三輪の花は、風景に溶け込むように佇みつつも、確かな存在感を放っています。
どこか遠慮がちでありながら、しっかりと咲いている——その姿は、まるで「和」の精神を体現しているかのようです。
目に見えない「和」の心をたどって
青と白、静と動、空と水。すべてが溶け合うようなこの風景には、日本人が古くから育んできた感性が息づいています。
装飾を削ぎ落とし、ほんの一滴の美しさに心を傾ける。そんな「間」の美しさが、この一枚には満ちているのです。
この作品が語るのは、自然と心が共鳴する静かなひととき。
見るたびに、日々の中にある“和の静けさ”を思い出させてくれるような、そんな写真です。
結びに 〜心の中の花を生ける〜
写真に映るのは、花と山と水だけ。けれどその奥には、言葉にしきれない豊かさが広がっています。
それをそっと切り取るように表現されたこの一枚は、「和花写流」ならではの自由さと感性の集約です。
自然の器に、心の中の花を生ける。
そんな感覚で始まったこのシリーズは、今も静かに、そして確かに、見る人の心に語りかけています。
