はじめに 〜涼をたずさえて〜
夏の盛り、木陰のひんやりとした空気や、風に乗って届く水音が、何よりのご褒美に思える日があります。
そんな季節にふさわしく、「和花写流」シリーズの今回は、涼を呼ぶ一枚です。
枯山水の静寂な庭に据えられた石に、清らかなミニ・テッセンの花を添えて。
その奥には滝の水飛沫がきらめき、静かでありながら、命の流れを感じさせる作品となりました。
枯山水に浮かぶ、清々しき華やぎ
白砂に描かれた波紋のような模様と、ひときわ黒く際立つ石。
そこに添えられたのは、ミニ・テッセンの小さな花たち。
そのひとつひとつが、涼やかな風にそよぐように、軽やかに咲いています。
華やかさをもちながらも、派手にはならず、むしろ**「静の中の賑わい」**のような絶妙なバランスが印象的です。
水音の気配、静寂の奥に
背景に流れる小さな滝は、音が聞こえてくるようなリアルさを持ちながら、作品全体に柔らかなリズムを与えています。
水の存在があることで、石と花という静止した要素に“時”の流れが生まれ、写真に物語が宿ります。
滴り落ちる水、そこに憩う花々——
それはまるで、夏のひとときを慈しむような風景。
いま、この涼しさのなかで
花を見つめているだけで、暑さを忘れるような清涼感。
けれど、この風景は「ただの涼しさ」ではなく、心の中にそっと涼をもたらしてくれるような、静かな癒やしでもあります。
自然の中の造形をそのままに生かし、わずかな手を添えて花を生ける——
それが「和花写流」の魅力であり、今回の作品にはその精神が涼やかに息づいています。
結びに 〜涼やかなひとときを贈る〜
この一枚には、真夏の中でふと見つけた“清涼の刻”が、そっと閉じ込められています。
枯山水の静けさ、花の軽やかさ、そして滝の水音。
それぞれが調和し、季節を超えた涼しさを届けてくれます。
しばし、暑さを忘れ、心も体もすっと落ち着くようなひとときを。
暑中お見舞い申し上げます。