切り株に宿る、意志ある一輪の佇まい
夕暮れの海辺に、ぽつりと咲いた一輪の白い花。
切り株から伸びるその枝は、まるで生きているかのように、確かな方向を見つめていました。
この作品は、撮影した切り株に、生命のような強さと美しさを宿らせたいと思い生けた一枚です。
遠くへ向かって飛ぶ鳥たちが、花の意思と呼応しているようにも見え、静けさの中にひそむ深い感情を映し出しています。
切り株が花瓶になるとき
「和花写流」では、自然の中の何気ない存在を、花を受け止める“器”として見立てます。
今回選んだのは、表情豊かなひとつの切り株。
一見すると枯れた命のように見える切り株も、その中に花を生けた瞬間、新たな物語が息づき始めます。
花が切り株を通して語りかけるような構図は、無機質なものにさえ、命のぬくもりを宿せるという希望を感じさせてくれます。
白い花が見つめる先に
この白い花には、どこか意志のようなものを感じました。
力強く、しかし決して主張しすぎず、ただ静かに“そこにいる”。
その視線の先に重なるように、左上に飛び立つ鳥たちを配置しました。
それは、何かを目指して羽ばたいていく存在に花が想いを重ねているようにも見えます。
この構図は、静けさの中に流れる「未来へ進む気配」をそっと表現したものです。
海辺の夕暮れに溶ける花の想い
海を染める夕焼けは、一日の終わりであると同時に、明日への入り口でもあります。
その空気の中で咲くこの花は、過去を見送るようにも、希望を見据えるようにも感じられます。
一輪の花が放つ静かな力。
「和花写流」が大切にしているのは、そうした“言葉にならない感情”を写真の中に宿すこと。
自然と心を重ねるこの表現を通して、少しでも誰かの胸に響く風景が生まれたなら、何より嬉しく思います。
ひとつの花が語る、静けさと希望
花は、咲いた場所を選べません。けれど、そこに根を張り、まっすぐ咲くその姿に、私たちは不思議な勇気をもらいます。
今回の作品は、花の静かな意志と、それを支える自然の器が響き合う瞬間を形にしました。
写真を通して、ひととき心を静かにできるような、そんな景色をお届けできていたら幸いです。
