キング・クリムゾン:ムーンチャイルド

ムーンチャイルド

ピート・シンフィールドの詞は英語に疎い私にもわかりやすい単語でとても想像を刺激してくれます。

このアルバムを初めて知った時全体の展開に感動しましたが、特にピート・シンフィールドの詞には感銘を受け、詩作もしました。

グレッグ・レイクの電子処理されたボーカルもこの世界にピッタリです。

Moonchild
including The Dream And The Illusion

Talking to the trees of the
cobweb strange
Sleeping on the steps of a fountain
Waving silver wands to the
night-birds song
Waiting for the sun on the mountain.

She's a moonchild

彼女は樹に語り掛ける
蜘蛛の巣が奇妙に絡まる樹に
噴水の階段で眠っている
彼女は銀色の指揮棒を振る
鳥達の鳴き声に合わせて
山で日の出を待っている

彼女は月の子供

出典

  1. 21世紀のスキッツォイド・マン
    21st Century Schizoid Man (including "Mirrors")
  2. 風に語りて
    I Talk To The Wind
  3. エピタフ(墓碑銘)
    Epitaph
    including "March for No Reason" and "Tomorrow and Tomorrow"
  4. ムーンチャイルド
    Moonchild
    including "The Dream" and "The Illusion"
  5. クリムゾン・キングの宮殿
    The Court of the Crimson King
    including "The Return of the Fire Witch" and "The Dance of the Puppets"

21世紀のスキッツォイド・マン

 

キング・クリムゾンの宮殿〜風に語り手ムーンチャイルド

シド・スミス著『キング・クリムゾンの宮殿〜風に語り手』より

(Fripp, McDonald, Lake, Giles, Sinfield)
「ムーンチャイルド」のバック・トラックは、8月31日木曜日にレコーディングされた。アルバムの中でもっとも繊細なナンバ一だ。そのため、この曲はしばしば見過ごされがちだ。

事実、インプロヴィゼーションの部分は、1991年に発表された『紅伝説1969-1984』のボックス・セットではフリップによって完全に削られてしまった。

にもかかわらず、〈ドリーム〉と〈幻想〉(当時、バンドの中では(The Free Thing)と呼ばれていた)を含むこの曲は、クリムゾンのもう1つの面を表わしている。

速さのある「スキッツォイド・マン」やゴシックな雰囲気をもつ「クリムゾン・キングの宮殿」と同じぐらい、彼らのサイケデリックのとらえ方を知るうえでは重要な1曲だ。

バラッドの部分は最初、2月にカフェの地下でリハーサルされた。フリップは「メロディは主にわたしが書いた。イアンは細かいところを調整した。ミドル・セクションはすべてわたしだと思う。ギターのラインとソ口は、ガイド・トラックだ。ここでは時間は1つの要素なのだ」と言う。

けれども、インプロヴィゼーションのシークエンスを入れるという決定が行なわれたのは、アーティスティックな理由であったのと同時に、作品の不足部分を補うという実際的なものだった。

彼らのライヴ・セットには、「ゲット・ザイ・ベアリングス」(68年のドノヴァンのアルバム『ハーディー・ガーディー・マン』から)「トラヴェル・ウィアリー・キャプリコーン」「ドロップ・イン」「火星」などが入っていたが、トニー・クラークとのセッションの間でさえも、どの曲も彼らに合っているとは思われていなかった。

音楽の抽象的な表現を探ろうとする姿勢は、長くこのグループの特徴だった。

「僕たちは、フリー・セクションでかなりの自信を得ていたし、‘‘安全策”なしでプレイしていたんだ。ときどき手に汗握る感じの瞬間もあったよ。僕たちにとってもオーディエンスにとっても、とてもエキサイティングだった」マイケル・ジャイルズは語る。

ドラマーであるジャイルズは、ジェラード・ストリートのオールド・プレイスやトラファルガー・スクェアの後ろにあるセント・マーティン・イン・ザ・フィールズのリトル・シアターをよく訪れていた。ジャイルズに特に感銘を与えたグループの1つはスポンテニアス・ミュージック・アンサンブル(SME)だった。

ギタリストのデレク・ベイリーや若手パーカッショニスト、ジェィミー・ミューアといった、UKフリー・ジャズ・シーンを代表するアーティストをフィーチャーしたドラマーのジョン・スティーヴンスが率いる、非常に影響力のあるグループだ。

短い不協和音や音符をランダムに演奏すること、また無音といった手法は、彼らが「ムーンチャイルド」のインプロヴィゼーションの部分をレコーディングしていた当時、SMEが演っていたことをどんなことでもやってみたいという気持ちの表われだった。

歌の部分は、幻影のようなサウンドで包まれた中、張りつめた感じのフリップのギターで始まる。タイトなパーカッションの入った歌は、ス口ーな中世音楽のパヴァーヌなどとは違った・厳かなペースをもっている。

曲の中の洗練されたダンス的な要素は、明らかに映画俳優であり監督でもあるヴィンセント・ギャロの98年の力ルト・ムーヴィー『バッファ口ー '66』に影響を与えた。この曲はタップ・ダンスのシークエンスに使用されている。

明るいヴィブラフォンの部分——以前のセッションから残されたインストゥルメンタル部分で、ここではマクドナルドが演奏している——は、最後の土壇場で決まったものだ。にもかかわらず、この曲のトーンを決定し、作品全体に対して明確な意昧をもたらした。

レイクとシンフィールドは、インプロヴィゼーションを行なう他のメンバーのようにコントロール・ルームに座っていた。

イアン・マクドナルドは回想する。
「ちょうど僕たちは〈ムーンチャイルド〉をレコーディングしていて、マイクのドラムは弱音器をつけてセット・アップされていた。彼はタオルとかいろんな物をドラム・セットに被せていたんだ」

「おかしいのは、ヴォーカル・ブースでセット・アップされたヴァイブをもっていたことだ。僕と他のプレイヤーの間で視線を交わすことはできなかったんだ。フリップとマイケルはお互いに見ることはできたと思うけど、僕は彼らを見ることはできなかったし、僕がヴァイブを演っているのを彼らが見ることもできなかった。僕はヘッドフォンを通して演奏していただけなんだ。だから目で確認する合図もそれに似たものもない。サウンドの一部がそれだったのかもしれない」

歌の部分が終わると、ヴィブラフォンによる靄のような雲が気だるく伸びていく。最初期のキング・クリムゾンのフラクタルであることは間違いない、マクドナルドとジャイルズとフリップのインプロヴィゼーションが進められていく。

ジャイルズがもっとも軽い符点のようなシンバルで加わる前に1分以上ある。それは、習慣的なプレイという反則に陥るよりも、それを聴きたいという彼の願望の証だ。

しばらくして、フリップが高音でのビッキングを始める。曲はきびきびと速度を増していきながらより尖っていて断片的な感じになり、今度は急に切り詰められたようなメロディの断片を演奏し始める。

演奏者が、他の演奏者がプレイしている実体を想像しようとするが、音楽的に見えないという状態だ(9分50秒のところで、フリップはミュージカル“オクラホマ!”の〈飾りのついた四輪馬車〉の断片を演奏する)。

ジャイルズは、ミュージシャン自身が楽器になって演奏するという未知のエリアに入っていく。

「僕はこのセッションのことをよく覚えているよ。天上にいる偉大なる音楽の女神に指示されているようだった。全体にコントロールされているのではなくね。コントロール・ルームに戻って、プレイ・バックして、“これを僕がプレイしたのか? どこからこんなのが出てきたんだ?”って思ったよ。

イアンがヴァイブをプレイしているときがあった。彼は速い演奏をしていて、僕はシンバルでまったく同じようにやっている。どこからこれがきたのか? どうやってこれが起こったのか? 僕たち3人がプレイしていただけなのに。

彼はスタジオの別の端にいて、事前に打ち合わせはしていなかったんだ。にもかかわらず僕たちは同時にスリルを味わったんだ。意図的にはできないよ。想像することもできないな」

おすすめの記事