風に語りて『クリムゾン・キングの宮殿』より
2曲目「風に語りて」(McDonald, Sinfield)
I've been here, and I've been there, and I've been in between.
私はここにいたし、そこにもいたし、その間にもいた。
「風に語りて」の歌詞を読むと、それはまさに禅のプログレッシブ・ロックと呼びたくなる楽曲です。
風のイメージと、風の中に微かに禅問答が聴こえるような……
ピート・シンフィールドの詞が素晴らしいです。
特に、「風に語りて」の歌詞は、誰もが知っている簡単な英単語しか使っていないのに、その意味はとても奥深いものを感じます。
Said the straight man to the late man
Where have you been
I've been here and I've been there
And I've been in between.
風に語りて[シド・スミスの解説]
シド・スミス著『キング・クリムゾンの宮殿〜風に語り手』より
この牧歌的で息抜きのような曲は、クリムゾンのフォークの要素を示したもので、7月29日火曜日にレコーディングされている。エールズベリーのフライアーズでのギグで演奏し歓迎された翌日のことだ。
彼らはウェセックスでこの2曲目のナンバーに取り組んだ。ダブル・トラックのフルートによる魅力的な楽飾で始まり、レイクの快い声が、それと同時に生でレコーディングされたマクドナルドによる短いハーモニーで増大される。
レイクの声に重なる、おずおずとした感じのハーモニーに彼は少し後悔したが、アレンジャーやソリストとしてのマクドナルドにとってはそれが強みでもあった。反芻するようにくり返すクラリネットの内省的な音は、天真欄漫な明るい雰囲気に暗い装飾を加えているようだ。
コンサートでこの曲はもっと活気にあふれたペースで演奏された。もともとブロンデスベリー・ロードでマクドナルドが演奏するアコースティック・ギターで始まった曲だ。
「何年も話題にのぼる話があったんだ。"バンドにロバート・フリップを得たということは、もう誰もギターを弾かないということだ"ってね。僕はアルバム・ヴァージョンでは自分がギターを弾くべきだったと思っている。だけど木管楽器とキーボード類と、その他残りのものもすべてやっていたんだからね」とマクドナルドは言う。
この曲がクリムゾンのレパートリーになると、フルートのソロ部分を調整するためにその時点でAで演奏されたものがEに変更された。
曲は、マクドナルドによる優美なフルートのソロ・パートを手助けする感じになっていて、ゆったりとした雰囲気を作り出す不鮮明なリヴァーブの輪の中にあると言ってもいいだろう。
それに比べると、フリップのパートは、ぼんやりとしていて、いくぶん飽きるところがある。フルートとドラムスの間で行なわれる躍動感のあるインタープレイで曲は終わる。けれどもこのとき、マクドナルドはパーフェクトなソ口を避け、別々に録った2つのテイクを合わせたのだ。編集された部分は、5分23秒のところで聴くことができる。
マクドナルドは説明する。「最後の部分でのドロップ・インは目立ってしまった。なぜならステレオで分けるのとは違うからだ。僕は別々のトラックに2つのソ口を録ったんだ。そして1つのソ口を抜き取り、もう1つのソ口に入れたんだ。フルートは1オクターヴ落ちているよ。1つ目の始まりもいいし、2つ目の終わりもいいんだけど、あの繋ぎ目がよくないんだ」